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事業承継における非上場株式の評価と相続税リスク:円滑な承継のための対策

Tags: 事業承継, 非上場株式, 相続税対策, 株式評価, 税務リスク

はじめに:事業承継と非上場株式の重要性

会社経営者の方々にとって、事業承継は企業の永続性を確保し、次世代へ円滑に経営を引き継ぐ上で避けては通れない重要な課題です。特に、事業承継においては、多くの場合、企業の株式が承継対象となりますが、上場企業とは異なり、非上場株式の評価は複雑であり、相続税・贈与税のリスクを内包しています。

適切な事業承継計画を策定せず、非上場株式に関する対策を怠った場合、予期せぬ多額の税負担が生じるだけでなく、経営権の不安定化や後継者間の紛争に発展する可能性も否定できません。本記事では、非上場株式の評価が持つ特性と、それに伴う相続税上のリスクを深く掘り下げ、これらのリスクを軽減し、円滑な事業承継を実現するための具体的な対策について解説いたします。

非上場株式の評価方法と相続税上の特性

非上場株式は市場価格が存在しないため、税法上の評価方法が定められています。その評価方法は企業の規模や状況によって異なり、相続税額に大きな影響を与えます。

1. 非上場株式の主な評価方法

非上場株式の評価方法は、主に以下の3つが挙げられます。

これらの評価方法は、企業の状況や株主の区分(同族株主か否かなど)によって適用が異なり、評価額を大きく左右します。例えば、純資産価額方式は企業の保有資産が評価に直結するため、含み益の大きい不動産等を多く保有する企業では、予想以上に評価額が高くなることがあります。

2. 相続税上のリスク要因

非上場株式の評価額が引き上げられる要因は多岐にわたります。

これらのリスクは、適切な事前対策がなければ、円滑な事業承継を妨げ、企業の存続そのものに影響を及ぼす可能性があります。

円滑な事業承継のための具体的な対策

非上場株式の評価とその税務リスクを踏まえ、以下のような具体的な対策を講じることが考えられます。

1. 株式評価額の引き下げ対策

相続税の負担軽減を目指す上で、非上場株式の評価額を合法的に引き下げることは有効な手段の一つです。

これらの対策は、個社の状況や財務状況に応じて効果が異なります。実施にあたっては、会社の経営状況や将来計画と整合性を取りながら、税務・法務の専門家と連携して進めることが重要です。

2. 納税資金対策

評価額が高い株式を承継する場合でも、納税資金の確保ができていれば、事業継続への影響を最小限に抑えることが可能です。

3. 事業承継税制の活用

国の政策として、円滑な事業承継を支援するための税制措置が存在します。

この制度は大きなメリットがある一方で、非常に複雑な要件と事後管理が求められます。適用を検討する際は、専門家と十分に連携し、自社の状況に合致するか、将来のリスクも踏まえて総合的に判断することが不可欠です。

4. 事前対策としての組織再編・信託の活用

より長期的な視点に立ち、組織構造自体を見直すことも有効な対策となり得ます。

これらの対策は、会社の長期的なビジョンと連動させて検討する必要があります。

結論:早期かつ複合的な対策の重要性

非上場株式が関わる事業承継は、単に株式を後継者に引き継ぐという行為以上の、多岐にわたる法的・税務リスクを内包しています。特に、株式の評価額が相続税に与える影響は大きく、納税資金の確保、経営権の安定化、さらには相続人間の紛争防止といった課題に直結します。

これらのリスクに対応するためには、早期の計画立案と、株式評価額の引き下げ、納税資金の確保、事業承継税制の活用、そして必要に応じた組織再編や信託の活用といった複合的な対策を講じることが極めて重要です。

事業承継は、企業の永続と経営者のご家族の安寧を確保するための最重要課題の一つです。個々の状況に応じた最適な対策は異なり、専門的な知見と経験が不可欠となります。事業承継を検討される際には、税理士、弁護士、司法書士といった専門家と連携し、包括的な視点から計画を進めることをご検討ください。